親が死ぬということ24 父との最後の夜
★☆★ 父との最後の夜 ★☆★
通夜の終わったあと少しだけ食事を取り、その後からは父の近くにいた。幸いなことにコーヒがあったため、コーヒーとタバコを吸いながら最後のひと時を父と過ごした。長男は早々に寝たが長女と次男坊は私と一緒に起きていた。次男坊は最初のうちは怖がっていたが次第に慣れてきたようで、ちょこちょこと父の顔を覗きに行く。そして一言「まだ進化してないね」。うーん、その発想はなかった。私の場合もしかしたら起き上がって来るのじゃないかと思いながら父の顔をちょこちょこ見ていた。ドラマなんかでよくあるシーン、棺桶に泣きついて「オヤジィ~」。そんな感じに私もなるのかと思っていたが、眠っているように棺桶に入っている父にはそれができなかった。まだまだこの世にいないという実感がなく、時折激しく何とも言えない悲しみに襲われることがあっても、泣き崩れるまではなかった。
朝方5時頃嫁が起きてきた。多くの人が寝ている大広間では寝付けないようで、起きていたようだ。こんな遅くまで起きていたのは東日本大震災以来である。それ程眠くはなかったが、当日の葬儀の体力も温存したかったので、嫁と交代して床に入った。布団の中に入ったはいいが、周りのいびきがすざましい。なるほどこれで寝ろというのは少し酷かなと思った。誰がうるさいのかと思い周囲を見渡すと私の弟のイビキがナンバー1だった。小さい頃父のイビキがうるさくて眠れなかったことを思い出した。
朝8時に前に目が覚めた。その日は朝から日差しが眩しかった。そしてコーヒーを片手にタバコを吸いに行った。空を見上げると青々した空が拡がっていた。葬式でなければ爽やかな朝なんだろうけど、そうは言いながらも父の旅立ちの日、爽やかに送り出せるのはとてもいい事なんだろう。