親が死ぬということ12 家族5人での帰省
正月休みの帰省、寝床となる母宅に向かう。父の病院に速攻で子どもと嫁を連れて行きたかったので荷物だけを母宅においてすぐに言えを出た。病院までは歩くかバスで行く手段があるが、たまたま弟の仕事が早く終わったので母宅まで来てくれる。ただし車は軽自動車なので運転手除いて3人しか乗ることができない。ひとまず弟には子供3人を連れて行ってもらうことにした。嫁と私はバス代をケチるため、いや早く行って父の病状を確認することが怖かったのかもしれない、そのためテコテコと歩いて病院に向かった。
いつもの階まで階段で上がっていく。エレベータで上がっていってもいいのだが、悪い方向を考えてしまい悪い現実に早く会いたくもない思いもありいつも階段を登っている。いつもの階まで昇って行きいつもの病室に行く。よかった、まだ病室は下の階に行ってはいない、一安心。病室に入り父の顔をみる。明らかに先週よりも状態は悪くなっている。
当分風呂に入っていないという。看護師の方に風呂に入れてもらうのが恥ずかしいというのだ。昔は看護婦の方に入れてもらえるのであれば喜んではいる、なんて言っていたのに。そこで嫁がタオルを濡らして顔や体を拭いた。看護師の資格があるので昔は看護師や介護施設で働いていたのだ。喋り方を聞いているとそんな感じの話し方をしており手慣れた感じで我嫁ながら久しぶりに感心した。
病室の中に6人も入っていたためあまりにも息苦しい状況になっていたので、一旦席を外して喫煙室に向かい一服して病室へ戻ってきた。すると長女が病室から出ており、涙ぐんでいた。長男には事前に癌であること、そして先は長くない話はしておいた。長女には一言も言っていない。ただ単に病院に見舞いに行くとだけ言い連れてきたのだ。中学二年にもなるとこの様な状況を見ると先が予測出来るのだろうか?
小学校2年の次男坊は状況は把握できていないらしく、弟と遊んでいる。帰り際に父が次男坊を呼んだ。
「Ooちゃんごめんな・・・」
と声をつまらせ涙ぐみながら次男坊に語りかけた。この時で私の悲しさクライマックス。3兄弟の中で一番父を好きなのが次男坊なのだ。ちょこちょこと手紙を出している。父は中学校しか出ていなく、またロクに小中学校に通っていないため漢字があまり書けないのだ。そういう父が孫に向けて誕生日に手紙を書いてきてくれる。父からの手紙を見て次男坊も手紙を書くようになったのだ。その手紙が一番の父のお気に入りのようで、おそらく父が一番可愛いのが次男坊だと思う。3人の中でも一番人間味のある人間だと思う。まだまだ現実がわからない次男坊、父が亡くなることが理解できるのだろうか。ここで父が亡くなることによって、次男坊への影響がでないか心配だ。